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2006年懸賞論文:入選作品 「社会と私」原口美紀さん

2007/03/23

「OFFICE原口」営業中(社会と私)

原口 美紀

^第一子出産前に退職して約10年専業主婦でいた頃、よく「専業主婦だから社会から取り残される」という言葉を耳にしていた。社会とはいったいなんだろう。経済活動をしている場所だけが社会だろうか。次代を担う子どもを生み育てている母親は社会の構成員ではないのだろうか。

^社会とは自分が関わる全ての世界を指しているのではないだろうか。子どもが幼稚園や小学校に通うようになって、私自身の活動範囲も広くなった。子どもの帰宅時間に合わせて働けるようにと業務委託の仕事を始めたのもその頃だった。ある年、生協のエリア委員、幼稚園の美化委員会の委員長、小学校のPTAの広報委員長と選考委員長を兼任、それに業務委託の仕事と、スケジュールの調整がつかないほどの仕事を抱えたことがあった。そんな時ふと頭に浮かんだのが「office原口」という考え方だった。私は「原口美紀」という会社の社長。どの仕事もoffice原口にとっては大切な仕事ばかりなのでうまくスケジュールの調整をしてこなしていくしかない。家で子どもと過ごす時間は絶対に外せない社内会議の時間というところである。夫は相談役で会長といったところだろうか。

^そう、社会とは数学の集合に出てくる円のようにさまざまな要素が幾重にも重なり合ってできているのだ。その円が重なり合った中心にoffice原口がある。

^確かに私にも専業主婦だった頃に焦りが無かったわけではない。それまで使い慣れた親の姓を捨て、夫の姓を名乗り、「原口さんの奥さん」「〇〇ちゃんのおかあさん」と呼ばれることにアイデンティティーを否定されたような気持ちになったこともある。しかし、同年代の子を持つママ仲間しかいなかった子育て時代前期の私に年も経歴も違うたくさんの仲間を与えてくれたのは子どもが通った幼稚園や学校のPTA での「〇〇ちゃんのおかあさん」としての活動だった。パート勤めをしている現在でもいろんな場面で私を支えてくれるのはPTAで知り合った仲間たちである。

^今も勤めに、小中学校のPTAの委員にとoffice原口に休日は少ない。なかなか家族と休みが合わないことや、子どもの生活に合わせた勤務時間のせいで月収があまり多くないのが悩みの種だが、「office原口」という考え方に行き着いたおかげで、独身でバリバリ働く友人にコンプレックスを感じることも無くなった。家事育児、勤めに学校の出ごと全てが私の関わる社会である。今の私は結婚前に正社員で働いていた頃よりも社会人として何倍も輝いていると自負している。

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