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歴史学科

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■歴史学科行事ブログ http://blog.livedoor.jp/history7790/ (西洋史 森先生運営)

■福岡大学人文学部歴史学科卒業生の言葉
山田 雄三 氏(福岡大学大学院人文科学研究科史学専攻・博士課程後期)LH98台

大学時代を有意義に生きるために―「考えること」と「行動すること」―

脳というのは、ひとつの大きな「箱」です。読書をしたり、人と話したり、
新しい体験をしたりすると、その箱のなかに次々と「情報」が放り込まれてきます。
例外なく、窮地に立たされた人間は、この「箱」にすがり付いて「答え」を求めます。
「どうすれば今の状況から抜け出せるのでしょうか」「本当に私がやりたいことは
何でしょうか」「この満ち足りなさの正体は何でしょうか」。
その「箱」のなかに十分な「情報」が蓄積されている場合は、そのなかで無数の
「情報」が瞬時に結びついて「答え」を導き出してくれます。しかし、「情報」が
十分ではない場合は、残酷なことですが、いくら問いかけても「箱」は何も答えて
くれません。

 「答えを出すために必要な情報が不足している場合は、絶対に答えは出ない」。
当たり前のことなのですが、しかし、この「当たり前」を忘れて袋小路に迷いこんだ
経験は皆様にはないでしょうか?これまでの私自身の経験を振り返っても、人生の
節目節目で「情報が不足しているのに、必死に考えて答えを出そうとする」という
失敗を繰り返してきたように思います。大学を選ぶとき、解決できない悩みに直面
したとき、大学卒業後の進路について考えるとき。その時々に、確かに「それなり
の答え」は出ましたが、どこかリアリティのない、そのリアリティのなさを
「思い込む」ことによって覆い隠すしかなかった、そのような心もとない「答え」
であったと思います。

「考えて答えがでなければ、さらに情報を集める」。このような当たり前のことに
気がついたのは、大学院進学後の研究生活を通してでした。学問において「答え」
を導き出す作業は並大抵のものではありません。「答え」が自然と浮き彫りになる
まで、丹念に丹念に、ひたすらに「情報」を集めつづけます。「答え」がでるのは、
その作業の最終段階に達したあとのことです。このような「方法」を自分のなかで
確立する以前は、「情報を集める」作業を怠り、「考える/答えを出す」作業ばかり
していたように思います。「無」から「有」を生みだすかのごとく。当然、そこから
生まれてくる「答え」は中身の詰まっていないスカスカのものばかりでした。

今ではこのような失敗を絶対に繰り返しません。考えて「答え」がでなければ、自分
の身体をつかって「情報集め」に奔走します。例えば、私はイギリス近代史を研究
していますが、自分の研究にリアリティがなければ、「どうすればリアリティが
もてるのか」などと考えずに、実際にイギリスに行って現地の生活を体験してきます。
また、何か悩みごとがでてくれば、「かつて同じ問題で悩んだ人がいるかもしれない」
と考えて、過去の哲学書や思想書を読み漁ります。あるいは、できる限り幅広いタイプ
の知人や先輩に悩みを話して意見を聞きます。また「演劇」や「登山」等に興味を
抱けば、「なぜ自分はそれが気になるのだろう」ということを追求するために、
実際にそれらを体験する機会をつくります。また、昨年から研究のかたわらで着物屋の
経営を手伝っているのですが、「会社経営は楽しい」などということも、実際に体験
してみなければ決してわからなかったことであったと思います。

昔はよく、四年間の大学時代(ときには退屈なことが多い)はいったい何のために
存在するのだろうと考えました。しかし、今では、これからの人生を切り開いていく
ための「情報集め」のために存在する、と半ば確信をもって答えることができます。
ここでの「情報集め」とは、存分に書物を読み、人と交わり、様々な新しい経験を
積み重ねていくことです。社会に出れば「情報集め」の時間は激減します。
大学時代だけが、例外的に、自由に、自発的に「情報集め」に集中することができます。
もしあなたに悩んでいることや気になっていることがあって、「答え」が出ないよう
でしたら、ただちに自分の身体をつかって「情報集め」に奔走することをおすすめします。
「情報」を集める、考える、「情報」を集める、考える、この絶え間ない反復運動のなか
で、いつかきっとあなたが求める「答え」に到達できるはずです。そして「箱」のなかに
「情報」が蓄積されればされるほど、またその「情報」がリアルで重厚であればあるほど、
あなたの生き方により大きな「自由」と「自信」と「豊かさ」がもたらされることと
思います。頑張ってください。

※歴史学科の卒業生・在学生の方へ※
在学中の思い出や、後輩へのメッセージを募集しています。お寄せいただいた作品は、
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