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「現代中国・アジアからの視点」則松彰文先生~“Novis2006”より~

2006/11/04

現代中国・アジアからの視点
東洋史 則松彰文

^今年一月のある火曜日の夕刻、私は札幌から帰ってくる家族を出迎えるため、福岡空港のロビーに居た。しかし、東日本に降った大雪の影響で飛行機はかなり遅れるとのこと。私は、喫茶店でコーヒーを飲みながら時間をつぶすことにした。
^さほど広くはない店内に客はまばら。いつもの空港特有のざわつきはなく、比較的落ちついた雰囲気である。そのせいか、三つほど離れた隣席の男女二人連れの客の会話が、窓際カウンター席に座った私の耳に聞くとはなしに入ってきた。
^六十近い年恰好の男性客が、連れの若い女性に向かって熱っぽく語っている。
「今の中国はねえ、もう金、カネ、かね……金が第一。中国人は日本人と見ると金をかすめ取ろうと、あの手この手で近づいてくるんだ!」
「へえ~っ、そうなんですかぁ~?!」
男性は自らの経験に基づくものか、具体例をあげて女性に語り続けているらしいが、声のボリュームを落としたために詳細は聞き取れない。女性はといえば、この話に興味があるのか無いのか「そうなんですかぁ~?!」を連発している。二人はコーヒーを飲み終えると、これから飛行機に搭乗するのか、バタバタと店を出て行った。この男性がこれまで何を経験し、一体中国で何があったのか?話を聞いた女性には中国・中国人がどのようにインプットされたのか?勿論、私には知る由もない。しかし、この会話に接した後の私の脳裏には、次のような想いが浮かんできたのだった。
^近年経済成長の著しい中国。二〇〇五年度の中国の貿易黒字は、二年連続して日本を抜き、米・独につぐ世界第三位となった。しかし、沿海部と内陸部、都市と農村、持てる者と持たざる者の間においては気の遠くなる程の経済格差・生活水準の落差が存在する。実際、中国に一歩足を踏み入れると、街を行き交う人々の圧倒的エネルギーと表面立った格差が現実のものとして両の眼に飛び込んでくる。観光地では、土産物売りがすさまじいパワーで我々に迫ってくるのだ。「センセイ、センセイ!三個で千円!」見事な日本語と彼らのパワーに惑わされて、いわゆるボッたくられるケースを、誰しも一度や二度は経験するだろう。しかし、言うまでもないことだが、これは現代中国の一面ではあっても、全てではない。小さな子に優しい手を差し伸べ、さわやかな笑顔で会釈する寛容な中国の人々もまた驚くほど多いのだ。
^思うに、私たち日本人の多くは、自らがアジア唯一の「先進国」の人間で、経済的にも豊か。それに対して中国をはじめとするアジア諸国は未だに発展途上・経済成長途上で、一部の都市や金持ちを除いて貧しく、汚く、そして遅れている……。こう無意識のうちに断定してはいないだろうか。
^はっきり言って、この認識は決定的に誤りである。全てが誤りというわけではないにしても、本質的に誤っている。大学生となった新入生諸君は、それを自らの眼で確かめ、自らの五感をもって体感して欲しい。シンガポールに行けば、福岡以上に発展した都市のスケールに目を丸くすることだろう。マレーシアを訪れたなら、人々の落ち着いた暮らしぶりにため息をつくことだろう。まさに百聞は一見に如かず。私が先に述べたことをも含め、人の話を鵜呑みにするばかりではなく、先ずは自らが体験し、自らの頭で考えるようにすることを、新入生諸君に私は求めたいのである。

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