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2009年懸賞エッセイ:入選作品 「仕事と私」日野鐘子さん

2010/05/23

「仕事と私」

                                        LJ990548 日野鐘子

今年で仕事をはじめて8年目となる。
「仕事」は私にとって、親よりも、時には恋人よりも、身近な存在である。

学生のときに、就職活動を始める際に思ったこと、それは仕事とは「お金を稼ぐことだ」
ということ。しかしそれと同時に、仕事をしている時間は睡眠時間と同じくらいに人生の
大半を費やす時間だということにも気づいた。自らの仕事を決めることは、そのまま私が
どんな人間になるかを決めることと同義だと思った。

できれば仕事は自分のために、自分が成長できるようなものがいい。
そう思い、ある中小企業に入社した。中小企業では、一人でこなす業務領域が広いこと
もしばしばである。また、特別な社員教育もないまま現場で即戦力を求められることも
ある。そういった環境で自分を追い込むことで成長できるのではないかと思った。

選んだ業種は広告代理業だったが、非常に幅広い業種のクライアントとおつきあいする
チャンスがあることが魅力的だった。まずはこれで社会を知ることができる。
そしてときに商品企画に参加し、リスクマネジメントに対応、またキャンペーンでは多くの
人を動かすことを要求された。経営者と一喜一憂しながらものごとをすすめていくことは
学生あがりの自分にとって大変刺激的でありがたい毎日だった。

大学で学ぶことができなかったビジネススキルを<OJT>と呼ばれた荒削りな方法で
身につけ、悩みながらも有意義な時間を過ごすことができたから、当初の狙いどおり
だったと思う。

しかし、そんな中ではっきりと芽生えてきたものがある。それはスタッフをはじめ、クライ
アントや取引先の力になりたいという思い。欲を言えば、お会いするすべての方々に
対して役に立ちたい、という思いである。

自分軸から他者軸へ、思考が少し広がったときに、私は仕事を変えた。
現在は他者のためにキャリアカウンセリングをしている。

自分の人生を考えてはじめた仕事を経験し、他者の人生を考える仕事に就いた。
「世界あっての日本、他者あっての自己」という人文学部日本語日本文学科のポリシー
を、仕事を始めて8年目のいま、ようやく理解できてきた気がする。

人文学とは、到達点の見えない学問のようだ。
卒業してなお、「仕事」を通じて私のフィールドワークは続いている。

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